トスカーナの海とタロットガーデン

トスカーナの海沿の村タラモーネと、小さな中世の村カパルビオとタロットガーデンへ。

タラモーネ港

タラモーネは南トスカーナのマレンマ地方に位置する小さな漁村である。中世に建てられた領主アルドブランデスキの城塞を中心に300人ほどが住む。漁師と炭焼き職人のひっそりとした漁村が歴史に登場するのは、19世紀のイタリア統一運動の立役者ガリバルディと彼が率いる千人隊がタラモーネに寄港した時である。

「妻子わすれて家をすて 義のため恥をしのぶとや 遠くのがれて腕を摩す ガリバルディや今いかん」と与謝野鉄幹が「人を恋ふる歌」の7番で謳うほどに、 ガリバルディは明治期の日本で知られた人物である。イタリア統一運動と明治維新がほぼ同時期で西郷隆盛と比較された。

海

今ではイタリア人が観光バスで立ち寄る避暑地の一つとなっている。

青く透き通るタラモーネの海

タラモーネは、吸い込まれそうなほどに青く透き通る海に囲まれている。イタリアの綺麗な浜辺に「バンディエラ・ブルー(青い旗)」という称号が与えられるが、今年は全国で368箇所が選ばれた。意外にもバンディエラ・ブルーの浜辺の数は、リグリア州が1位、トスカーナ州が2位である。海の綺麗さはもちろんのこと環境・安全面も整っているのが条件と聞くと、南イタリアが意外と少ないのはそのせいだろう。

カパルビオとタロットガーデン

青い海を後に、高台に建つ中世の村カパルビオでランチ休憩をする。小さな村だが、魅力的な場所である。

カパルビオ

遠くに海を見ながら中世に造られた城壁を歩くのは、なかなかに面白い。このあたりは地中海潅木地帯と呼ばれ、オリーブ、ジェニパー、ローズマリー、西洋ヤマモモ、樫の木などの常緑低木が茂り、地中海ならではの香りを運んでくれる。

カパルビオ眺め

カパルビオの城塞の上から景色を眺める。この城塞は4世紀にわたってこの周辺を支配していたアルドブランデスキ伯爵によって13世紀に建築された。カパルビオはその後、オルシーニ家、続いて15世紀にはシエナ共和国に支配される。その証拠に、村の入り口となる門はシエナ門と呼ばれる。しかしシエナ共和国も16世紀にはフィレンツェに敗北し、この地もフィレンツェのもの=メディチ家が治めるトスカーナ大公国の一部となるのである。

ピノッキオの世界みたい。トスカーナの田舎は屋根の色が揃っていて絵になる。

ピアノ

厳格な佇まいの城塞に隣接して20世紀初頭に建てられたネオルネッサンス様式のコッラッキオーニ邸の幾つかの部屋は、当時の装飾と家具が残っている。写真のピアノは、ジャコモ・プッチーニが弾いたと逸話がある6音音階のコンラート・グラーフのピアノである。プッチーニは、このマレンマ地方に狩用の別荘を持っていた。

nana

カパルビオの村の前に、ニキ・ド・サンファルの代表作「ナナ」。昼食のレストランで、南トスカーナ特産品うどんのようなパスタ・ピチとマレンマ地方のワインをいただく。

食後は、放牧された羊たちを横目に次の目的地であるニキ・ド・サンファルの「タロットガーデン」へ向かう。

タロットガーデン

フランス人の女性芸術家ニキ・ド・サンファルによって創造された不思議な空間。タロットカードをモチーフに色が炸裂する楽しい庭園である。

作品を眺めるだけでなく、登れたり、中に入ったりできて、さらに楽しさが増す。精神を病んでいた時期もあるというニキ・ド・サンファルの心の脆さと、芸術は爆発だ!というような力強さと、しかしどこか平和が共存する、そんな不思議な輝く公園なのである。

この日のお客様は、カパルビオ駅からローマへ向かわれた。カパルビオはトスカーナ南端、ラッツィオ州との境界に位置する市であるから、ローマが意外と近いのである。

Giardino dei Tarocchi

開園期間

  • 4月1日から10月15日まで、毎日14時30分から19時30分
  • それ以外は、毎月第一土曜日9時から13時

入場料

  • 12ユーロ
  • 学生と65歳以上は7ユーロ
  • 7歳以下は無料

住所

Pescia Fiorentina
Capalbio
Provincia di Grossetto (58100)

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