アッバディア・サン・サルヴァトーレへ。
オルチャ渓谷の南端に、アッバディア・サン・サルヴァトーレという村がある。
お世話になっているアグリツーリズモの息子夫婦がこの村に住んでいる。天国のような風景に囲まれたアグリで両親と一緒に住まないの?と尋ねても、この村を離れたくないと言うので、はて?どんな村ぞや?とずっと思っていたが、ようやく訪れる機会を得た。
背後に標高約千七百メートルのアミアータ山が聳える。19世紀末から水銀の鉱山で栄えたが、1970年代には廃坑となった。寂寥感漂う鉱山跡が、今は歴史博物館として残っている。
中世には、ローマへの巡礼の道フランチジェナ街道が近くを通っていたことと、この村の名前の由来となった大きな修道院(アッバツィア)があることもあり、この村へ立ち寄る巡礼者も少なくなかった。
標高八百メートルと辺鄙な場所にもかかわらず、6千人もの人口とは今もそれなりに栄えているようである。実際、想像以上に大きな村であった。旧市街は、趣きのある1本の通りがあるぐらいかと思っていたら、実は石畳の道が迷路のように入り組んでおり、何処も彼処も写真スポットになり得る小路ばかりで驚いた。
テラコッタの陶芸家がいるのだろうか?家々の玄関先に多くのテラコッタの作品が飾られていて目を楽しませてくれる。「猫に注意」と書かれているが?
ん?注意するのは、この子? お昼寝の邪魔したようだ。ごめん、注意不足だったよ。
アッバディア・サン・サルヴァトーレは、トスカーナらしい明るい黄色の石造りの家並みがお洒落な村というよりは、山村の威厳のある渋みを感じる、ひと昔にタイムスリップしたような郷愁を誘う居心地の良さがある。「この村を出たくない」といった若夫婦の気持ちがわかった気がする。昨今、イタリアの田舎でも若者の離村が深刻で売り家の看板を多く見かけるが、「仕事さえあれば」と難しい条件付きであるが、若者をも惹きつける村であることが頼もしい。「仕事さえあれば」、こういう田舎に私も住みたいものだ。
・栗祭り・
10月11-12-13日, 18-19-20日(10月の第2週、3週末)
オルチャ渓谷ツアー
ツアー料金はお申込み人数で異なります。2名様以外の場合は、ツアーページをご覧いただくか、お問合せください。 別途、昼食代、施設入場代(任意)が生じます。