ワイナリー「サルヴィオーニ」訪問。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの「サルヴィオーニ」といえば、憧れのワイナリーの一つである。写真右のボトル、1985年がブルネッロ「サルヴィオーニ」の記念すべき初ヴィンテージ。
綺麗な酸が特徴のトスカーナワインの中でも最も透明感が高いのがブルネッロで、そこにビロードに包まれた柔らかい女性のイメージが加わる。この美しい女性に太陽の暖かみがあるのか、都会的なのか、森の中に静かに佇んでいるのか、そんな違いがあるような気がする。なーんて私の勝手な解釈だが、とにかく女王さまという感じ。その中で、紳士なワインが「サルヴィオーニ」なのではないかと思う。
家族経営で生産量もごくわずかで(年間総生産数1万から1万5千本!)、訪問・試飲を商売としていないわけだから、お客様から訪問希望をいただくが何度か断られたのも致し方あるまい。それが今回、駄目元で尋ねてみたらOKのお返事をいただき、喜びの訪問と相成った。
当然ながら、小さな貯蔵庫。だがサルヴィオーニファンならば、涙が出るほど素晴らしいワインたちが眠っている。
2008年は特に好きな年。欲しいなぁ・・・。
樽から2017年のものを試飲させて頂く。
まだ完成していないのはわかるけど、なんですかね、十分すぎるほど美味しい。2017年は雨が少なく暑かった年。しっかり力強い。
さらに、2015年を。これも未完成だが、先のに比べぐっと完成度が上がっている。「サルヴィオーニ」のワインには、深みがある。先の見えない不安な深淵ではなく、先が見えないけれど包み込まれるような安心感というか。お父さんみたいな?
サルヴィーニ家の娘アレッシアさんからワイナリーの歴史、醸造の説明、こだわりなどを伺った。彼らの信念がグラスの中で深紅に煌めくワインに深みを与えるのかもしれない。あまりの美味しさに涙目になったお客様にアレッシアさんが「美味しいワインは投資さえすれば誰でも造れるけれど、感動を与えるワイン造りは難しいのよ。でも、そんなワインを造りたい」と仰った。
この仕事をして思うのは、「感動が生まれる」こういう瞬間が好きなのだなと。
お客様の手土産の抹茶クリーム入りお菓子を試して「とても美味しいわ!」とにっこりするアレッシアさんはとても気さくで可愛くて、サルヴィオーニのワインが生み出す気高さと同時に感じる優しさは生産者をうまく表しているなと思った。
イタリア人でも日本人でも、信念を持って前進している人に出会った時はいつも自分の仕事について考える。
私はこの仕事を、「日本人が外国でできる仕事と言ったら日本人観光客相手ぐらい?」という、ごくいい加減な理由で始めた。添乗員の資格も取れたし、正直なところ、最初はイタリア語が話せる日本人が観光をちょっと手伝う程度のお粗末なものだった。しかし一歩踏み込んだ案内をとガイド資格を得てからは、ご案内先で言葉を単に右から左に伝えるのではなく、どこかで感動を生む説明ができるプロでありたいと願うようになった。お客様は十人十色なので難しいなと思うときもある。紆余曲折でここまで辿り着いたが、相変わらず完全な自信はまだない。それでも少しは手応えがあったと感じられる日には、ご褒美ワインを開けながらまた頑張ろうと思えるのである。
※サルヴィオーニ訪問は、サルヴィオーニワインを飲まれた方、サルヴィオーニワインのファンのみとなります。
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