6月のオルチャ渓谷 クレテ・セネージへ。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産者のひとつ、ポッジョ・ディ・ソット。モンタルチーノの南東に位置する、約10ヘクタールの畑を所有するワイナリーである。
イタリアでトップクラスの生産者だが、「神の雫」の影響もあるのか、日本でもすでに大いに名声を得ている。生産するのは、ブルネッロの弟分と言える2年間大樽熟成の「ロッソ・ディ・モンタルチーノ」、4年間大樽熟成の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。葡萄の出来のいい年のみ造られる5年間大樽熟成「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ」。
訪問すると、様々なこだわりを感じさせるワイナリーの哲学を知ることができるが、果てさて、その美味しさの秘密とは?
ポッジョ・ディ・ソットは、ピエロ・パルムッチ氏により1989年に生まれ、創設当初から伝統的な醸造法を守り続けるワイナリーだ。キアンティ・クラシコ地区半分とモンタルチーノ地区全域に醸造を教え「サン・ジョヴェーゼの父」と呼ばれた偉大なるジュリオ・ガンベッリ氏を醸造家として迎え、世界を感嘆させるワインを造り上げた。
なんとか醸造家が造ったワイン!という売り文句をよく聞くが、それが何を意味するのか、正直な話わからなかった。トスカーナで有名な醸造家では、アンティノーリのティニャネッロやソライア、テヌータ・サングイドのサッシカイアなどを造ったジャコモ・タキス氏が存在する。
国際品種は個人的には好みの品種ではないので、美味しいけどそれが何を意味するのか、イマイチわからなかった。しかし愛するサン・ジョヴェーゼで、神のような醸造家の手が加わるとどうなるか、というのを、ポッジョ・ディ・ソットは教えてくれた。
残念ながら、ガンベッリ氏は2011年末に享年87歳で他界した。ポッジョ・ディ・ソットが2011年の11月に最後の試飲をしてもらったその2週間後にこの世をさられたそうだ・・・。
さらに、2011年の9月ぐらいだろうか、ポッジョ・ディ・ソットはパルムッチ氏から、コッレ・マッサリへ売却された。コッレ・マッサリは、すでモンテクッコ地区にカステッロ・コッレマッサリとボルゲリ地区にグラッタマッコを保有する、ヨットのアメリカンカップの数回に及ぶ優勝者であるスイス人チームのエルネスト・ベルタレッリ氏の叔父クラウディオ・ティーパ氏が経営する企業である。
モンタルチーノにとって、地区を代表する大黒柱のひとつのようなワイナリーであったポッジョ・ディ・ソットの売却は、衝撃が走った。そんなワイナリーを手放してしまうなんて、何故に?と思うが、パルムッチ氏もご高齢である。原因はそこにあるようだ。
新しい経営者が今までのスタイルを変えるとは考えられないが、少なくとも2011年まではパルムッチ氏とガンベッリ氏の魂が入ったワインと言えよう。
今では当たり前なことが、以前は土壌より品種、樽はとにかくフランス産オーク材の小樽がもてはやされた時期に、ガンベッリ氏は「土壌を反映させた葡萄が一番大切で、健康なワイン を造るには健康な土壌が必要不可欠である」と言い続けた。実際、彼の哲学を色濃く受け継ぐガンベッリ・スタイルと呼ばれるワインが存在する。
ちなみに・・・。ガンベッリ氏が手がけたワイナリーのひとつに「カーセ・バッセ(ソルデラ)」も数えられることがあるが、50%手が加わったといったところである。(100%ではない)
というような裏があるわけだが、グラスを前に美味しさを考えると、ずばり「美しい進化をみせるワイン」なのではないか?と思う。
ワインは時とともに進化するものである。グラスに注いで10分待てば違ってくる。
私のワイン経験なんて乏しいものなのだが、そんな私でも、変わり行く進化に驚かされるワインなのだ。
先日、訪問した際に2008年の最新アンナータ(ヴィンテージ)のブルネッロを試飲させていただいた。2008年は、2月に開催されたブルネッロ試飲会で試飲したものだ。あの時は、苺のようなフルーティな味わいを感じたが、先日はチェリーっぽいフルーティーさはもちろん、ミネラル感や薬草の感じが増えた。
いや、これも飲まずとも言い当てることのできる進化の過程だ。しかし、これほどまでバランスのよい進化を見せるワインは、そうないのではないか?と思える。出来ることならば、同じ年のボトルを数本買ってその進化を楽しむことができれば、最高である。
でも1本140ユーロはするので、夢のような実験なのだが・・・。
ポッジョ・ディ・ソット、面白いワイナリーである。
ブログランキングに参加しています。よろしければ、応援クリックお願い致します。