ポントルモのキリスト降架
ストロッツィ宮の展覧会に出展されているポントルモの『キリスト降架』は、サンタ・フェリチタ教会のバルバドーリ・カッポーニ礼拝堂のために描かれたものである。
バルバドーリ・カッポーニ礼拝堂は、教会に入ってすぐ右手。15世紀にバルバドーリ家がブルネレスキに依頼して建築された礼拝堂だが、16世紀にはカッポーニ家の手に渡った。故に、バルバドーリ・カッポーニ礼拝堂と呼ばれる。今ではブルネレスキの建築した礼拝堂は改築され原型をとどめていないが、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会のマサッチォの『聖三位一体』にどのようなものであったを見ることができる。
現在、礼拝堂は修復中。足場が置かれている壁が『キリスト降架』の本来の場所である。
ポントルモの絵は、写真の額に縁取られている。この立派な額は当初からのもので、制作者は16世紀の建築家バッチョ・ダーニョロではないかと言われているが、定かではない。バッチョ・ダーニョロといえば、ドゥオモの丸屋根の未完成の下部分を設計すると『コオロギの籠』とミケランジェロが酷評し(これは逸話だそうだが)、バルトリーニ・サリンベニ邸を建築すると邸宅というよりは教会のようだと言われるなど多くの批判を受けた芸術家だが、これが彼の作品だとしたら文句無しの見事な出来である。
素晴らしい修復のおかげで、うっすらと黒ずんでいたものが美しい輝きを取り戻した。この額に飾られる絵も本来の鮮やかな色を取り戻したので、今まで暗いイメージがあった礼拝堂が華やかになることだろう。
ちなみに、修復の費用を受け持ったのは『Friends of Florence』というアメリカの団体。アメリカのこういうところは、素晴らしい。
礼拝堂の右手の壁には、ポントルモによる『受胎告知』がフレスコ画で描かれている。こちらも修復中。『受胎告知』が描かれたのは、礼拝堂はもとは聖母マリアに捧げられていたものだからということだ。写真で説明をしている方が修復士のダニエレ・ロッシ氏。
『受胎告知』も『キリスト降架』同様、パステル調の色が美しい。筋肉があってしっかりした体躯なのだが、まるで宙に浮いているような軽さがある大天使ガブリエル。ふわ~と天から降りてきたというのか、人間を超えた軽やかさがまさに天使!という感じ。ガブリエルの横顔ではない、顔の3/4は反対側を向いているのが珍しい。
聖母マリアの初々しいお顔が可愛らしく、天使が降りてきて、気配を感じる方に振り向く姿勢も面白い。『受胎告知』が描かれている壁面には2人の間に窓があるのだが、光と影の表現も自然で良い。ポントルモ、知れば知るほど興味深い画家である。
2018年1月21日にストロッツィ宮の展覧会が終了する。その頃には修復も終わっているだろう。来年の2月には、再びポントルモを礼拝堂で見ることができるのではなかろうか。楽しみである。
フィレンツェで一番古い教会だったサンタ・フェリチタ。ヴァザーリの回廊が通る教会でも有名である。
サンタ・フェリチタ教会
月曜から土曜
9時30分から12時30分、15時30分から17時
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