フェッラーラ観光へ。
エミリア・ロマーニャ州の町フェッラーラは13世紀初頭から4世紀に渡り、エステ家の居城として栄えた町である。それを裏付けるように水掘りに囲まれたエステ家のお城を中心として町が広がる。
広場には、街ゆく人々に「悔改めよ!」とでも説いてるかのようなサヴォナローラ像。15世紀に生きたドメニコ宗派の修道士サヴォナローラはその預言者的な説法が人気を博しフィレンツェに招聘され、フィレンツェを第二のエルサレムすることを目指した神権政治を推進するが、最後は同地で絞首刑の上、火刑となった。フェッラーラの出身であった。
フェッラーラの町の守護聖人サンジョルジョ(聖ゲルギオス)に捧げられた大聖堂はファザードの彫刻が非常に面白く楽しみにしていたのに、修復中!代わりにファザードを複写した布が掛けられている。この布は、高さ30m以上、重さ600kg、複写・制作に5日間を要し、1日半をかけて設置された、宣伝が一切入らない欧州で最も大きい工事用シートなのだそうだ。
昨年から今年にかけて、フェッラーラ全体が修復作業に入っているようで、見所の一つであるスキファノイア宮も修復中で非常に残念であった。スキファノイア宮は今年の年末または来年初旬に再オープンの予定だそうだ。
大聖堂の側面は意匠の異なる柱が並び、その下には商店が軒を連ねる。宗教と商業とは相容れない気もするが、一番人が集まる場所だったことを思うと合理的と言える。この広場からはローマへの道が続く。北イタリアから、欧州から、多くの巡礼者と商人がここを通り過ぎたであろう。
教会の鐘楼は、ルネサンスの最も秀でた芸術家の一人レオン・バッティスタ・アルヴェルティ作だが、未完成のまま残された。アルヴェルティがこれを設計したのはローマを訪れた矢先だったので、古代ローマの偉大さが反映した荘厳なデザインなのだそうだ。確かに、隣接する教会とは異なる雰囲気を持つ。
それでも鐘楼のすごさがイマイチわからんと思っていたところ、教会付属美術館に完成模型があり、なるほどとても堂々とした趣のあるものになるはずだったのだ。
さて、教会付属美術館を訪れたのはコズメ・トゥーラの絵を求めて。コズメ・トゥーラはルネサンス期にフェッラーラ工房の画家の一人として活躍し、後に工房が残した作品はフェッラーラの黄金時代と呼ばれた。今回のフェッラーラ旅行の目的は、コズメ・トゥラの絵を見たいというお客様のご要望に答えるため。コズメ・トゥーラ作の「聖ゲルギオスの竜退治」は予想以上に大きく、素晴らしい。ここまで来た甲斐があったといえる大作である。トスカーナでみる作風とは異なり北方の影響を受けた神経質な線が目に新しい。
13世紀にドゥオモ側面にあった「巡礼の扉」を飾った月の仕事の彫刻。ぶどうの収穫だから9月かな?ほっかむりの耳の部分とか、手に浮かんだ血液とか、籠の網目とか、サイコー!最高ですぜ!美味しそうな葡萄。サンジョヴェーゼかしらん。
11月は、無花果狩り。ザリガニっぽさが可愛い蠍座のシンボル。無花果の奥行きがすごくて、ずっと見ていられるかも。木によじ登ろうとしている姿に頑張って!と言いたくなる。
ちなみに、ロマネスク様式の立派な教会の入り口にしばしば描かれる月の仕事の彫刻。どこの教会でも同じシンボルの月と、表現が異なる月がある。私の誕生月11月は多様な月である。これはアレッツォの教会のもの(13世紀)。フェッラーラでは無花果を収穫していたが、アレッツォでは根菜類を収穫。ブーツ履いて帽子かぶってカブだか人参だかを引っこ抜く姿が楽しすぎる。話が逸れた。
次にディアマンテ宮殿へ向けて、エステ城からまっすぐに続くエルコレ1世通りをいく。フェッラーラ公エルコレ1世の命により、1492年、フェッラーラをルネサンスの理想都市として再生させる都市増築と城塞建築が始まった。エルコレ1世通りはその核となる大通りの一つである。ディアマンテ(ダイアモンド)が埋め込まれたような美しい宮殿は、公の弟シギスムンドによりエステ家の宮殿として建造されたが、現在はフェッラーラ国立美術館である。
フェッラーラ派の絵画の宝庫。コスメ・トゥーラや、エステ家別荘の書斎を飾ったミューズを描いた絵が展示されている。
精密で静かな絵は灰青色のクールトーンの壁が似合う。
おへそから十字架上のキリストが出てる〜。トスカーナでは見たことないテーマもあって、面白い。
フェッラーラ特産パン。コッピア・フェラレーゼ。絵も違うけど、パンも違う。
フェッラーラの特産のお菓子。これ、パンペパート、シエナの郷土菓子やん。お菓子は同じかーい!
画家デ・キリコはフェッラーラに駐留したことがあり、フェッラーラを主題にした数点の作品を残している。コッピア・フェラレーゼもエステ城も、デ・キリコの手にかかると形而上の世界となる。
ルネサンス期の小都市国家は、有力な一族が僭主となり、経済面で、そして洗練された領主の力量を表すために芸術をもって町を繁栄させた。イタリアのあちこちで、まるで美しい貴石が詰まった宝石箱のような小都市が当時の姿を残し訪れるものを魅了するが、フェッラーラも紛れもなくその一つである。
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