カエルのフリット祭り
外食でお金を使いたがらない旦那が珍しく「お祭り(サグラ)でカエルを食べに行こう」と提案した。
カエル(ラノッキオ)?
そう、トスカーナはカエルを食す文化が残っているのだ。かつて米作も比較的盛んだったトスカーナでは自然の害虫対策として田んぼにカエルが棲息し、稲刈り後に増え過ぎたカエルを捕獲し食用にしたらしい。ちなみにトスカーナの郷土菓子にお米を使ったものがいくつかあるのも、材料があったからに他ならない。
断られることを承知で高校生の子供達に尋ねると一緒に行きたいと、これまた珍しいことを言うので久しぶりに家族で出かけた。この催しは、フィレンツェ市のブロッツィ地区で毎年5月末と6月初旬の2度の週末に開催され、ブロッツィ地区の主役料理であるカエルのフリット(天ぷら風揚げ物)と羊料理がメインとなる。今年で46回目を迎える伝統的お祭りと言える。
カエル祭りを主催するのは、フィレンツェ市郊外のミゼリコルディア(慈善団体)と献血慈善団体だ。
何故に教会に関連する慈善団体が食の祭典を開催するのか?と不思議に思ったので調べてみた。イタリア語の祭典を意味するサグラは、もともとは教会の献堂式など聖なる(サクロ/Sacro)儀式を指した言葉だったものが、そこから儀式に伴う祭典も含むようになり、次第に宗教的なものから世俗のお祭りも意味するようになったそうだ。そういえばストラヴィンスキーの「春の祭典」はイタリア語で「サグラ・デッラ・プリマヴェーラ」と言い、この題名からもサグラがもとは宗教的儀式だったことが窺える。
現在、イタリア中で四季に渡りサグラが開催されており、そのほとんどが収穫祭や地元食材に関するもので開催団体は多岐にわたる。サグラで提供される食事は安くて美味しく、大勢の地元民が集まって賑やかなお祭りとなる。地元の若者も給仕の仕事を担当していて、こういう地元の繋がりは羨ましくも思う。ときには小学生が運んでくれたりして、微笑ましい。
さて、プリモに頼んだ羊肉のラグーのパスタがやってきた。外で食べるラグーは何故こんなに美味しいのか?羊肉が大好きな私は非常に気に入った。ラグーといえば豚・牛ミンチ肉が一般的でトスカーナならば猪肉のものがあるが、羊肉は珍しい。ラグーは何肉でも美味しいけれど、猪も然りで豚・牛ミンチ肉にはないコクがあって良い。
お待ちかねのカエルのフリット登場。紙のランチョンマットに描かれたこのサグラの宣伝にカエルの絵があったので、フリットの形はあまりじっと見ずに食べることに。
遠い昔、南仏でカエルの足のフリットを食べたことがあるが、あの時は見た目がもう少し足だった気がする。これはまるで鳥の唐揚げのようだ。
お味も鳥の唐揚げに似ているがそれよりあっさりとして、とても美味しい。難点は骨が多いこと。私はどんなお肉も頂くしその中でも子羊が大好物だけれど、カエルを食べては取り出す小さな骨を見て少しばかり胸が痛んだ。「いただきます」が命に感謝を込めた挨拶ならば(説は様々だろうが)、これは日本を長く離れている今も、素敵なそして大事な日本語だと心から思う。
ラグーには赤ワインでしょ?と思ったが、この暑い日に1本単位で購入となると2人ではキツく、しかも自転車で30分ほどかけて来ているので帰りが心配ということで、白ワインを。水のように美味しく頂けた。ピノ・グリージョはいいね。
そして食事後もまだ外が明るく、アルノ川沿いに走る自転車は消化に良い運動となった。
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