フィレンツェ 遊歩と魚ランチ

フィレンツェで魚介パスタ

ドゥオモ

曇り空の下、野暮用で歴史地区へ行く。
すぐに用事も終わり、さほど寒さも感ずることがなかったので町を逍遥することにした。
いつものように花の聖母大聖堂の前を通る。
どんより灰色の空にもレンガ色の丸屋根が映える様は、こんな日でも憎いぐらいに美しい。

フィレンツェ 散策

サンタ・クローチェ教会近辺へ。このあたりは、直径約126m、収容人数約2万人(ローマのコロッセオの4分の1ほど)とそれなりに大きな規模の古代ローマ時代の円形劇場があった場所で、後年、その劇場跡を利用して建物が建てられたために通りがゆるい曲線を描く。歴史地区を歩いていて、「あの建物へ行きたいけど、方角的にはこっちのはず」と近道したつもりが、えらい遠回りになってしまう所以がここにある。フィレンツェの歴史地区には、円形劇場跡以外にも「やられた!」と思えるゆるりと曲がった小路が多いのだ。しかし何度騙されても、所狭しと路地の入り組んだこのあたりの雰囲気は魅力的だ。

花

古物商(いや、新品かも)の店頭に飾られた花木が目を引く。石造りのフィレンツェの町は、緑が少ない。花の都と呼ばれるからには花で町中を飾る粋な住民がいればと思うが、夏に長期休暇に出ると暑さで草花が持たない、ベランダが少ない、玄関先に置けば盗まれるなど、様々な理由から敬遠されるのかもしれない。外国人の住民も多いので、町の景観なぞに興味はないのだろう。残念なことだ。

カフェイタリアーノ

このレストランは「カフェ・イタリアーノ」。ミシェラン・ガイドの候補生シールが張られているが、実際は美味しいのだろうか?いやに魅力的な室内装飾ではある。惹かれるように店頭のメニューを見ると、へっへっへっと後ずさりするお値段だ。日本のイタリアンレストランに比べればお手ごろ値段かもしれないが。値段の割には、パッパ・アル・ポモドーロやほうれん草とリコッタのラビオリ、ニュッディ(先のラビオリのパスタの皮なし)、ラザーニャなどと大変つまらないメニューというのが残念なところか。


レストラン併設のピッツェリアは、メニューは3種類のピッツァのみ。ということは、よっぽどピッツァの生地に自信があるということか。これは試してみたいものである。


ふらふらと歩いていると、腹時計がなった。これ以上の用事はないのだが、家へ帰るのは面倒臭いということで外で食事を済ませるとして、さて、どこへ行こう?と、思案していると旦那が閃いた!
そうだ!あの噂の魚屋へ行ってみよう!
と、思いついたのが「Fiaschetteria di Pesce/立ち飲み処・魚」 Via Taddeo Gaddi 5/6r
「一昨年の11月にオープンしたんだよ!」という愉快な店主が家族と共に営む「Fiaschetteria di Pesce/立ち飲み処・魚」は、ここから少し離れたところで1961年に魚屋として創業し、最近ここに引っ越してきた。

フィレンツェで魚介パスタ

魚屋が切り盛りする立ち飲み処なので、新鮮な魚介類が店内に並ぶ。店にいる間も、息子さんらしき人物が更なる魚を仕入れてきた。

魚屋

魚介が並ぶ店内。雰囲気的に「立ち飲み処」と書いてしまったが、カウンター席もあるFiaschetteria とは日本語で何と言うのか、飲み屋とでも?

おじさん

これは、愉快なおじさんの兄弟。(推定)
家族経営ってのがわかるよ!息子さん(推定)もお母さん(推定)も顔がそっくりだもの!でも、この息子さんのお父さんが愉快な店主かこのおじさんか、どっちかわからないね。(全くもって余計な考察である)

魚介のスパゲッティ

メニューは「本日の一品」のみ。本日の魚介のパスタと、ハウスワイン(ベルメンティーノ)をいただいた。ただただ美味しいの一言のみ。
盆地のフィレンツェでは肉や豆類が一般的で、牛ステーキやタリアータと呼ばれる肉のたたきのようなもの、豆のスープなどのメニューを堪能すべきだと思うが、それでも魚が食べたくなったときに、こんな新鮮な魚介類が味わえるお店は有難い。

ブルスケッタ

「本日の一品」に加え、魚介が主役のサラダやブルスケッタなど豊富なつまみも提供している。パンの上で「見よ!」といわんばかりに蛸が主張している見事なブルスケッタに、冬の旬の野菜アーティチョークと海老のサラダも、非常に食欲をそそる。

惣菜

ここは、「Fiaschetteria/立ち飲み処」という名前から、ぱっと食べてぐっと一杯飲んで去るというのが礼儀である。店内は、海を連想させる青色系の細かいモザイク柄の壁に面したカウンター席が、いくつかあるのみの簡易なもの。席に着き、かばんを床に置いていたら愉快な店主が飛んできて、「鞄はここに」とテーブル下のフックに掛けてくれた。簡易な作りではあるが、気の利いた細工である。写真右のブルーのナプキン横の魚ちゃん袋に入ったレモンの香りのお手拭も、嬉しい気遣いだ。(魚レストランには普通のサービスかもしれないが)店内に流れるボサノバ風の音楽も、心地よい。店内の装飾、壁の色、食器、音楽が、さりげない中にもモダンで洒落ている。
歴史地区から少し離れているので観光客には少し遠方とは思うのだが、散歩がてらにというのであれば足を伸ばしても後悔はせぬ品質である。テイクアウトもできるので、蛸のブルスケッタや海老の揚げ物など、宿に持って帰ってワインの肴にしてもよい。

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