フィレンツェのマーブル紙のお店を訪問。
ピッティ宮殿広場にあるこのお店は1856年から続く。1856年といえば、イタリア統一前で、「イタリア」という理想に熱くなっていた、そんな時代である。
フィレンツェのマーブル紙は、人気のフィレンツェ土産の一つである。そこで美しい紙の模様の秘密を探りに、老舗店「Giulio Giannini e Figlio/ジュリオ・ジャンニーニ・エ・フィリオ」を訪れた。
これがこのお店の最初の店構えで、製本屋として創業した。昔に比べ製本の注文は少なくなったものの今も製本業は続けていらっしゃる。製本に加え、時代の要望とともにフィレンツェ風紙(カルタ・フィオレンティーナ)やマーブル紙の商品も製作している。
フィレンツェ風紙という柄があるが、この葉っぱのような花のような柄をご覧になられたことがあるだろうか?これがオリジナルのフィレンツェ風紙で、イギリス人観光客が多かった時代に、このお店で生まれた柄だそうだ。
マーブル紙は「墨流し」の伝統工芸に見られるように元は中国または日本の技術で、それが中東から欧州には伝えられたのは16世紀末頃。フランスで発達し、当時は羊皮紙の本の見返り紙として人気だったそうだ。もちろん製本が行われていたフィレンツェでも知られた技術であったが、今のようなマーブル紙の商品が生まれたのは第二次世界大戦後で、主にアメリカ人観光客の増加とともに盛んになった。
そんな歴史を伺いながら、マーブル紙の実演を見せてくださったのが、お店の6代目店主であり、職人でもあるマリア・ジャンニーニさん。
マーブル紙は美しい紙だが、職人作業とはいえお値段が少々高いなと思っていた。しかし今回じっくりとお話を聞き、その値段に納得がいった。材料は全て天然素材という。水溶液は涼しい海で取れた海藻を煮たもので、そこに牛胆を混ぜた絵の具を落として行く。水溶液も絵の具も自然な素材を用いるので数日しか使用できない。絵の具の雫を落として行くが、模様に影響を与える雫の重なり方や広がり方を知るには経験がものをいう。どう作ろうと十分に綺麗なのだが、心を打つ美しい作品を作るには一朝一夕ではできない。同じ模様のシリーズ作品の場合は、一回ごとに紙に全ての色が吸われるので同じようでも毎回異なる。作品はいつも唯一無二である。
ブログランキングに参加しています。よろしければ、応援クリックお願い致します。