2018年イタリア総選挙
引伸ばされ続けた総選挙が3月4日にようやく行われた。「5つ星運動」、中道右派、中道左派の3つの派が中心となったが、結果はどの政党も必要数の40%に満たず。予想通りの結果となり、株式市場も落ち着いていた。
投票数が40%に満たないと政権を握れないという案は、5年近く選挙法の改正を討論し決まったのがこれだけという役に立たない案である。実に40%とは連立なしで勝ち取るには難しい率である。明らかに、勢いを持って台頭してきた「5つ星運動」を阻止するためのもので、今まで存在していた大きな政党の生き残り策である。
選挙結果は、上院も下院もほぼ同じ。以下の表は下院のものである。
連立をせずに投票数が一番多かったのが「5つ星運動」約33%。
ポピュリズムを掲げ、失業率を減らし、政府の無駄使いを徹底的に排除し、不要な法(すぐに400!の法を)廃止するという、活発でクリーンな政策を提案している。一番人気とはいえども、票が足りぬ。しからば「5つ星運動」のプログラムに賛同すれば、どの政党でも一緒になっても良いとのこと。「5つ星運動」は右派でもなく、左派でもない。妥当と思えば右派にもなるし、左派にもなる。右派左派などと分けるのは古い!という。ごもっとも。
「5つ星運動」の「ベーシック・インカム」システムが話題を集めている。月々780ユーロ受領できる「ベーシック・インカム」は条件付き。成人であること、失業者であること(または低収入であること)、派遣会社に登録すること、週8時間の市の慈善事業に参加すること、人材育成コースを受講すること。登録した派遣会社から紹介された仕事を3回断ると「ベーシック・インカム」受領中止となる。この額は独身に対してで、家族持ちになると異なってくる。
月々780ユーロ!こんな条件でエエなら貰えるだけ貰おうと思えへんか?高スペックの失業者が溢れている中、そのレベルに見合う仕事が果たしてそんなに多くあるのか?私も外国人だが、「イタリアで働いている外国人の労働許可を剥奪しイタリア人を働かす」としなければならいのでは?イタリア人が仕事を選ばないなら、だが。
連立政党では中道右派が37%と一番投票率が多い。
この連立政権は「フォルツァ・イタリア」党のベルルスコーニがいてこそ集まったメンバーと言える。この中では、「北部同盟/Lega Nord」が一番票を集めた。投票前の最後のインタビューでベルルは余裕の構えを見せていたが・・・。だから、北部同盟党首のサルヴィーニが自分は首相だ!という顔をするし、ベルルも勝った!という。(ベルルは首相にはなれないが、将来は大統領を狙っているのだ)
サルヴィーニ率いる「北部同盟」が(この中では)人気を集めたのは、やはり北部の移民問題が反映しているのだろう。南から入ってきた多くの移民はフランスやドイツに行きたいのである。彼らは北へ北へと移動し、北イタリアの幾つかの町も移民を受け入れた。(ホテルを提供すると、ホテル経営者に幾らかの補助金が入る=儲けになるということもあるので)しかし、受け入れ人数が許容範囲を超え、町でウロウロする移民たちが犯罪を犯すようになり、夜、住民が町を歩くことができぬほど治安が悪化して2年3年が過ぎようとしている市もある。それを受けて、移民を送り返すと強硬案を提案している北部同盟が票を集めたのだろう。
中道右派が唱える「フラットタックス」なるシステム、税を簡略化させようというものであるが、確かにイタリアの税金システムは大企業はともかく中小企業や個人経営者でも税務士がいなくてはややこしくてわからない、税務士さえも知らない法があるというような、非常に難しいものである。納税に関する「Studio di settore」なるシステムを廃止する方針で、「Studio di settore」とは個人経営者が自分の職業の種類を細かくリストアップして、この職業ならば最低収入はいくらだからそこから引き出した最低税金はいくらと決める恐ろしいシステムである。予想された最低収入に満たない場合も、最低税金は払わなくてはならない!なんでや?恐るべし!だから、「Studio di settore」を廃止というのは大いにありがたいことだと思うが、結局は、あれよこれよで「貧しいものにはより税を、富めるものには減税を」という、世界で199番目(177番目とも)にお金持ちのベルルスコーニのための法なのだ。
中道左派は、大敗した。連立で約23%である。
それでも、レンツィ率いる「民主党/Partito Democratico」は北部同盟よりも「フォルツァ・イタリア」よりも票を集めた。ジャーナリスト曰く、いつもは「民主党」に投票する人が「民主党」に幻滅して「5つ星運動」に動いたと。党首レンツィはこれまでにない人気と同時にこれまでにない大敗をも「民主党」にもたらした。今の「5つ星運動」のように、政治に新しい風穴を開けてくれるのではないか?と期待が大きかった分、いつもの政治とちっとも変わらない、さらに悪化した状態に国民を導き、裏切られた感が否めない。
これを受けて、レンツィは党首を辞任すると言ったのだが、選挙の結果が決まってから、という条件を出した。辞めると言ったのだからさっさと辞めればいいのになぜに立ち止まっているのか。それは中道左派が「中道右派」とそして何よりも「5つ星運動」と連立するのを避けるためである。今まで敵対していた政党と、なぜに連立などができようかというのだ。嘘つきピノッキオ・レンツィのくせに、今なぜそこにこだわる?
国営放送の受信料を電気代に入れて強制的に払うようにしたのは君だよね?でも今回のスローガンに「受信料を排除しよう!」とまるで国民の負担を軽減するような話ぶりはどゆこと?上院は無駄な制度であるから廃止すべきと言ったのは君なのに、党首を辞任して上院議員になるんだってね?鼻が伸び続けるレンツィである。
マッタレッラ大統領に決議をということだが、彼も40%に満たないといけないという法を変えることはできない。ならば連立しか手がない。
「5つ星運動」は来るものは拒まず。ただし、右派でも左派でも連立したからには右派も左派も無くなるのが条件。連立を望む「民主党」党員もいる。が、レンツィが反対しているし、「民主党」は未だレンツィ派が半数を占めると聞く。中道右派の他の派との連立はベルルが反対。北部同盟としては同じポピュリズムだし「5つ星運動」と連立してもいいかな?と思ってるだろうけれど、ベルルあってこその中道右派連立を離れてはいけないから単独では無理か。中道左派と中道右派の連立?いや〜、生き残るならばなんでも良し?こうなると、イタリアを思うというよりは生き残り合戦である。「民主党」が通した最低40%法案が民主党を救う形となり(だからこその法案なのだが)、一番票が少なかった中道左派が鍵を握る。
投票率の図。青が中道右派、黄色が5つ星運動、赤が中道左派。
昔から北と南の人気政党は異なっていたが、今回もまた南北で綺麗に分かれる。昔から北は中道右派が多くトスカーナは中道左派である。実業家が多く移民問題で苦しむ北と失業率が高い南。同じイタリアなのに、これまではっきりと抱える問題が違うのはイタリアとしての国の歴史の浅さなのだろうか。
(リサーチ財団Istituto Cattaneo)
投票率は約73%で過去最低である。前回と違うところは、前回は北イタリアの投票率が高く(一番高いのでエミリア・ロマーニャ州約82%)、南イタリアは低かった(カラブリア州約24%ほど)。今回は南北に差がなかったという。南がマフィアから解放されつつあるってことなのかしらん?5つ星運動が南の票をかっさらった。
個人的には、なぜイタリアがEUに入っているのかわからん。「イタリア」というブランドで十分勝負できるはずでは?と思うが。だから5つ星運動が掲げるポピュリズムは良い方向に進めばありかな?と思う。しかし、同じポピュリズムであるサルヴィーニの北部同盟は好かん。あれはポピュリズムというよりファシズムじゃなかろうかと思う時さえある。ファシズムが掲げた国粋主義は、イタリアのような国での経済の発展には大いに役に立ったと思う。イタリアの特徴を商売と考えたのだから。今もフィレンツェやフィエーゾレの周辺に見られる糸杉とオリーブのいわゆるザ・トスカーナという風景はムッソリーニ時代のものである。(もともとそのような風景だったのだが、この時代に意識的に再生されたというのか)フィレンツェの紋章のあやめマークの紙(クリーム色の地に赤いアイリス模様)もその時代に作られた。しかし、皆が知っての通り、ファシズムは軍国主義や人種差別に至ったので決して再生してはならない。北部同盟が移民問題を実質的に早期解決してくれることを期待して票を集めたが、こんな人が首相になったらアカン。フィレンツェでも先日、黒人がイタリア人に射殺される事件が起きた。フィレンツェ側は、犯人は精神が参っており無差別の射殺で、たまたま最初に通りかかったのがセネガル人(黒人)であり不幸にも標的にされたというが真相はまだわからない。そのあとのセネガル人の人種差別反対の行進は町の花壇を壊したり、騒ぎを聞きつけてやってきた市長に唾を吐いたりといただけない態度のものであり、これまた自ら反感を買う行動で困り果てるが、ネオナチを増長させることだけはしてはいけないのである。(この後、フィレンツェのセネガル人団体が基金を募って壊した鉢代を支払うと申し出たようである。)
いつものこととも言えるが、混沌としたイタリアの政治である。決着がつくのはいつであろうか?決着がつくのであろうか?再選挙???また学校休みになるやん・・・・。
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