記憶の日とジーノ・バルタリ物語
1月27日は「記憶の日 La Giornata della Memoria」である。
2005年に国際連合総会で、1月27日を記憶の日として決議採択された。ナチス政権によりユダヤ人、ロマ人、同性愛者、精神障害者が殺害されたことを「確認し」、再び同じことが起こらぬように警告する日である。
この日、思いを馳せるのがイタリアの自転車競技選手ジーノ・バルタリである。おそらく以前も彼の話題をブログや他のSNSで話したことがあると思うが、何度でも伝えたい。
ジーノ・バルタリは20世紀の偉大なる自転車競技選手で、自転車界の英雄である。同時に、この世の真の英雄とも言えるのだ。
というのも、第二次世界大戦中、フィレンツェからアッシジまで自転車を往復し、自転車の中に隠していた偽の証明書でアッシジに隠れていたユダヤ人達を救ったのである。
フィレンツェからアッシジまで片道約180km、1日に数回行き来したこともあるという。彼ならば、警察に質問されても自転車のトレーニングといえば大義名分が立った。
この事実は彼の死後、彼の日記で知られるようになった。
「善はいうものではなく、行うものだ」「本当のメダルは服に付けるのではない、心に付けるものだ」という彼の言葉を聞くと、その心の偉大さに感服するばかりだ。
ジーノ・バルタリはフィレンツェ近郊のポンテ・ア・エマという村の出身である。生家には石碑が掲げられ、村には小さな自転車博物館がある。訪れる人は少ないが、ジーノの自転車をはじめ自転車の歴史が展示されている博物館は自転車好きには面白い場所であろう。
月日の流れとともに第二次世界大戦を、恐ろしいホロコーストを経験した人々が徐々に少なくなっている。いつか経験者が誰もいらっしゃらなくなると記憶も薄れて行くのだろうか?とふと怖くなるが、このように「記憶の日」として辛く悲しい思い出を後世に伝える日はとても重要なことである。2度と繰り返してはならない歴史である。そして、真の正義とは何か?をジーノ・バルタリから学ぶのである。