エミリア・ロマーニャ州のワイン「ランブルスコ」
先日、エミリア・ロマーニャ州が誇るワイン「ランブルスコ」試飲する機会を得た。
今では日本のサイゼリアでもランブルスコが飲める時代なので、飲まれた方も多いはず。
ランブルスコのイメージと言えば、安くて気軽に飲める「B級スパークリング赤ワイン」ではないだろうか?実際、私もそう思っていた。
普段はトスカーナワイン一筋の私であるが、飲み比べることができたお陰でランブルスコの素晴らしさを知るに至った。
ランブルスコとは、ワインの銘柄であり葡萄品種名でもある。
ランブルスコの銘柄は、モデナ市を中心に6つの地区のDOC(原産地呼称)に分かれている。
上の図の右側はモデナ県:中部のモデナ市があるソルバーラDOC、モデナ市北部がサラミーノ・ディ・サンタ・クローチェDOC、モデナ市南部にグラスパロッサDOC、前述3地区全てを含むモデナDOC
上の図の左側はレッジョ・エミリア県:北部にレッジャーノ、南部にコッリ・ディ・スカンディーノ・エ・カノッサ
ランブルスコワインの特徴的な香りと味は、基本的にベリー系フルーツである。時に赤いベリー系、時に黒いベリー系が強調して、そこにスパイスやその他の味が加わる。
まずは、モデナ県のランブルスコを試した。
Lambrusco di Sorbara /ソルバーラのランブルスコ
平地にあるこの地区の特徴は、ロゼワインかと思えるような鮮やかな淡い色である。そして、酸味が強い。酸味が強いので、良いスプマンテにもなれる。土壌はシルトと砂の2つの川に挟まれた地区で、川が氾濫するほど良いらしい。
ソルバーラDOCのワインは酸味が効いて少し塩気があるという私の好みの味であった。今回、数本のソルバーラを試したが、最も気に入ったのはCantina PezzuoliのPietra Rossa、赤い石と名のついたもの。野いちごのような香りがふわりとやってきて、後味に塩気もあり、非常によかった。ランブルスコでもこんなに可愛くなれるのかと感動した。素敵な食前酒になるし、酸味が脂っこいものにも合う。魚も良しで、お寿司にも合うのじゃないかな。
次に、同じワイナリーCantina Pezzuoli からPietra Scura、濃い石も本当に美味しかった。まずは色を見て頂きたい。先ほどのに比べて濃いのがわかる。こちらはグラスパロッサDOC。同じ作り手でも地区が異なると、見た目も異なるランブルスコが出来る。
Lambrusco di Grasparossa /グラスパロッサのランブルスコ
グラスパロッサという地区は、モデナ市を中心としたソルバーラ地区の南に位置し、この地区から丘陵地が始まる。土壌は主に粘土状、そう、タンニンが存在感を増すのだ。グラスパロッサは葡萄品種ランブルスコの1種で、ラスポ=茎とロッサ=赤いでグラスパロッサ(赤い茎)という名の通り、茎も枝も葉も赤く、ワインの色も紫に寄った赤が強い。泡も紫がかっているのが面白い。
赤い果実と少々のスパイス感にオリーブのような緑、そして何よりもソルバーラにはないタンニンがあり、より赤ワインらしさを感じる。
このワイナリーのグラスパロッサはバランスの良い本当にオススメの1本だ。
ランブルスコに相性ぴったりのチーズと共に。エミリア・ロマーニャ州の乳(牛乳80%+山羊乳・羊乳20%)をギリシアのサントリーノ島でチーズにしたというコラボ商品だそうだ。やはりワインは食事と飲むと美味しさが増す。
ワイナリーVilla di Corlo のCorletoもグラスパロッサ地区から。こちらのワイナリーは、先に比べてジャムのような重みがあった。好みが分かれるところであろう。これはこれで風格があって良い。畑が丘の麓に近いので、力強さが増すのかもしれない。(なんて、いい加減なことを言ってみる)サラミ持ってきて!と言いたくなるランブルスコ。
この日は、グラスパロッサの生産者ワイナリー「La Piana」から直々の説明が伺えて、とても運が良かった。ワインの美味しさに感動しただけでなく、生産者の情熱に触れることができた。
「La Piana」はビオワインの生産者だ。少し前はランブルスコをビオで生産しているワイナリーなどなかったが、最近、増えてきたらしい。名ばかりのビオもあるのでビオなら何でも良いとは言い難いが、真面目に取り組んでいるワイナリーは結果が現れる。要するに、ワインに畑が反映されるのだ。
「Lacrima di Bosco/森の涙」という素敵な名前のランブルスコは、森の中で木漏れ日の柔らかい日差しに包まれながら、野いちごやブラックベリーを摘む、そんなワインだ。そして驚くほどの持続性のある味わい。これが新世代のランブルスコか!素晴らしい。
「Montebarello Punto EAcapo/モンテバレッロ・プント・エ・ア・カーポ」は、グラスパロッサ地区の新しい試みで造られたワインである。プント・エ・ア・カーポとは、区切りそして再開という意味。
古いランブルスコに一区切りつけて新たに始めたことは、グラスパロッサ地区の中で更に特徴ある地区を小分割するという試みである。小分割地区は「Montebarello115」と名付けられ、条件の整ったワイナリーのみが参加できる。その条件とは、ビオ農家限定、収穫は手摘み、生産量は通常の半数など、なるほど以前のランブルスコではあり得ない条件だ。名前についた数字155は、現在参加している12軒のワイナリーが所有する畑の標高の平均値だそうだ。
苺にチェリーを感じるベリー系果実味というランブルスコの条件をしっかりと充して、さらにその上をいくとてもバランスの良い、これまた味に持続性のあるワインである。
レッジョ・エミリア県のランブルスコはどうだろうか?
Reggiano / レッジャーノ
単一から複数のランブルスコの葡萄品種を最低85%。土地の半分弱が平地、南に行くほど丘陵地となる、パルマとモデナの間に挟まれた地区。パルマやモデナのように重要な位の人々が訪れず、そのため訪れた人々を驚かすようなワインよりは農民たちが日常に楽しむワインの生産が中心だった土地。だから畑に育つ品種なんでも入れて造っちゃえ!ということだったのだろう。
それでも時と共に品質が向上し、テーブルワイン以上のワインとなったのは確かである。
異なるワイナリーのボトルを数本飲んだが、多くが私がイメージするランブルスコの味だった。ごく稀に家で飲むスーパーのランブルスコの味に似ていたからかも。
この絵の中の男はランブルスコを飲んでるわけではないが、こんな食堂で、どん!とテーブルの上に置かれたランブルスコというイメージである。昔ながらの気安さがランブルスコの良さだと思っている。陽気に食事を楽めるアイテムで、BBQにも良いワインではないだろうか。
Colli di Scandino e Canossa/コッリ・ディ・スカンディーノ・エ・カノッサ
ソルバーラも好きな地区だが、ここも大好き!レッジョ・エミリア県の南部の丘陵地だ。1日の寒暖差が出て香りが良く、火山岩もあるのでミネラルも感じるとのこと。この地区のランブルスコは、単一でも複数でもランブルスコ品種が最低85%。
私が試したのは、ワイナリー「Alfredo Bertolani」のグラスパロッサ単一種だった。ランブルスコの証拠である果実系にグラスパロッサらしいタンニンの存在感。それがはっきりとではなく早朝の丘陵地にかかる薄い霧のような烟った感じで、そこに微かな香草を感じる。好きな味や!
ランブルスコは一つのワイナリーが複数地区のDOCのボトルを造っているのが面白い。だからDOCごとの飲み比べも分かりやすい。
正直、ここまで特徴の異なるランブルスコに出会えるとは思っていなかった。嬉しい発見!これは是非とも、ランブルスコワイナリーツアーをご案内したい。トスカーナでワイナリーを楽しんで頂き、エミリア・ロマーニャ州へ移動しランブルスコワイナリー訪問、モデナかパルマかミラノで解散。ご興味ある方は、info@easyfirenze.com までお問合せ下さいませ。
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