2月のオルチャ渓谷へ。
2月、幾度かオルチャ渓谷をご案内した。霧が立ち込める日もあれば、雲が空を覆う日もあったが、それでもここぞという時には雲間から太陽が差して渓谷を美しく輝かせてくれた。
心地よい静けさを味わいながら、軽く曲線を描く町を歩く。何もない、それが魅力の村がトスカーナには存在する。ここもそんな村の一つとも言えるが、何もないようで実はちゃんと歴史がある。それでいて飾り気のない落ち着きが味わえる村なのだ。
村の目抜き通りには、観光客のためのお土産屋と地元民のための商店が軒を並べる。あら!カラフルなボタンが可愛いカーデガン。さすがイタリア、こんな田舎の村でさえ、商品がオシャレである。
クラフトビール屋で新作ビールを味わう。オルチャ渓谷に生育するよもぎのビール!爽やかな味わいがオルチャ渓谷の丘陵地を通り過ぎるそよ風のようで大好きな味!
こういう通りがたまらないトスカーナの田舎。壁の色、植物の緑、外灯、何もかもが絵になる。私は知っている、この奥に見事な藤が咲く一角があることを。でも、まだまだ先の密かなお楽しみ。
糸杉って随分と下の方から緑の枝が張るんですねと、ここ数回のお客様の感想が同じで、そう言われてみると確かに。短足なところが可愛らしい。
理想郷として造られた町は、半世紀を超えて今もなお甘美な村里として訪れる者を感嘆させる。
今年はクリスマスローズがオルチャ渓谷の彼方此方の村で春の到来を告げている。ローズとは名ばかりの、バラ科ではなくキンポウゲ科で、クリスマスの頃から咲き出す。伝説によると、クリスマスにイエスに捧げる贈り物が無かった少女が落とした涙から咲いた花だそう。一方、可憐な姿とは裏腹に古代ギリシアでは毒薬として知られていたとか。
1月までは低い光がうっすらと大地を覆う緑を輝かせ、予想以上の美を放つ。2月になると、光線の位置が変わってきたことで真冬とは異なる雰囲気を醸し出す。
行ったり来たりの春にもどかしさを感じるが、今年のアーモンドの花は予定通りに咲いてくれるようだ。急がず、焦らず。
曇り空だって綺麗なオルチャ渓谷の風景だけど、太陽が出るとやはり歓喜の声をあげたくなる。
ほとんど観光客が来ない村だというのに、この可愛らしさや、何事???枯葉や木ノ実で作ったリースもシックで素敵。
2月のオルチャ渓谷は、幾分高めの位置からの光が土色を際立たせるが、うっすらと霞がかった空気の中でヴァイオリンを奏でるような小鳥たちの声が響き、大地が目覚めようとしているのが感じられる。
それでもまだ、あと少し夢の中、だね。雲海が広がる。
標高の高いモンタルチーノの村では、春の嵐と呼ぶにはややせっかちかも知れないが、嵐と言っても差し支えないほどの風が吹いた日もあった。現に、外に置かれたバールの椅子が2脚、飛ばされた。それを眺めながら、リバティ風(アールヌーボー風)の歴史的文学カフェでホットチョコレートをすすって暖を取った。
2月はワインの里、モンタルチーノが忙しくなる月である。新作試飲会が行われるからだ。その時に決定したヴィンテージの評価が星の数としてパネルに描かれる。新しいパネルは色合いが素敵である。そして、4つ星。ヤッタ!
また次に来るときは、オルチャ渓谷はどんな表情を見せてくれるのだろう?
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