8月のオルチャ渓谷ツアー
8月中旬、写真がお好きなご夫婦をオルチャ渓谷ツアーへご案内させて頂いた。8月のオルチャ渓谷は、あらわになった大地の雄大さが見所である。
この日のツアーは、フィレンツェ発でオルチャ渓谷に一番近いローマ方面への電車の駅着だったので、オルチャ渓谷を西から東に移動した。
最初に訪れた村はモンタルチーノ。夏祭りのために地区の旗で飾られた村はいつもより賑やかで、普段より絵になったと思う。
2つ目の村は、サン・クイリコ・ドルチャ。石に囲まれた静寂が中世を感じさせてくれるので、お気に入りの村だ。
特に教会を眺むこのアングルが大好きなのだが、今回は銀色に光る大きな十字架の現代アートが視界を遮り、中世に浸る気分を台無しにした。しかし、現代アートは作品の意図を知るとより面白いので、さて、この巨大な十字架は十字架であること以上に何を訴えているのだろうか?調べてみた。
毎年この時期に、サン・クイリコ・ドルチャで現代アートの祭典が開催される。今年のテーマは「平和の庭園」。参加国は、イタリアはもちろんウクライナやロシアをはじめイラク、シリア、トルコ、中国など、戦争と関連する国々が多い。
“芸術作品が行う戦争とは、死や暴力・破壊を生むのではなく、美しさを生み出し、新しい視野を広げてくれる。”
そんな意味を込めて各国の芸術家たちはここで芸術作品で争い、刺激し合い、理解し合い、調和するのだ。そう思うと、光が主役となるこの十字架もここにあることの意義が見てくる。
トスカーナの至るところで自生する無花果。そろそろ収穫時期である。無花果はそのまま食べても、ハムやサラミ、チーズに合わせても最高で、ジャムにしても美味しい。と、青空の下で、空想上の食べ物をカロリーゼロで楽しむ。
狂ったように暑い夏日も少し収まり、雲の様子からも秋の到来を感じる1日だった。砂漠のように見える大地にオリーブや糸杉の緑が映える。
オルチャ渓谷には、映画の舞台となった場所がいくつかある。この糸杉並木の入り口が素敵な家は「グラディエーター」に使用された。この家と映画の中の家を結びつけるのは少し難しい。映画とは上手く作られているものである。
糸杉の通りに赤いスクーターが素敵!レンタル・ヴェスパでオルチャ渓谷を回っているイタリア人カップルがいたので、お願いして撮らせてもらった。ラッキー!イタリア中、どこが背景でも絵になるヴェスパだ。
世界遺産オルチャ渓谷の中にもう一つ世界遺産の村がある。そこは、ルネサンスの理想郷と呼ばれるピエンツァだ。ここが3つ目に訪れる村。
ようやく修復を終えた鐘楼から続くこの通りは、午後の日差しが強く散策の足取りも早くなる。秋を感じつつも、まだまだ夏は健在だ。
この日はお客様のリクエストにお応えして、ピエンツァのピッコローミニ宮の内部を見学した。邸宅内は写真禁止だが、オルチャ渓谷を見渡すテラスからの眺めは写真OK。なんと素晴らしい景色だろう!
4つ目の村で最後にオルチャ渓谷の絶景を眺めて、時間通りに駅へお送りした。
私はどの季節のオルチャ渓谷も味があって好きなのだが、それは運良くも全ての季節を見たからこそ言えることであろう。多くの場合が、人生でたった一度訪れるオルチャ渓谷となる。故に、出来る限り、その季節の、その日の魅力をお伝えできればと思っているが、夏の景色のグラデーションもこれもまた面白いとおっしゃって頂けたので安堵した。まぁ、私がどう足掻こうが、オルチャ渓谷が美しいことには変わらないのだが。
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