オルヴィエートのドゥオモ。
フィレンツェから車で約2時間、岩壁の上に建つ町オルヴィエートに到着する。高速から高台にオルヴィエートが見える様は、まさに聳え立つといった感じだ。
町の大通りからドゥオモ通りへ入ると、金色に輝くファザードを持つオルヴィエートの大聖堂がその姿を現す。
1290年から建設が始まったドゥオモは、ロレンツォ・マイターニ、アンドレア・ピサーノ、オルカーニャなど約30人の建築家、約150人の彫刻家、約70人の画家と90人のモザイク師により、約300年を経て完成された。
旧約聖書、新約聖書、最後の審判、エッサイの木(エッサイはダヴィデ王の父、聖母マリアの先祖。イエスの家系図)を描いたマイターニによる4枚の浮き彫り彫刻が見事である。美しく輝くモザイクが日の光に反射して煌びやか。スイス人の歴史家ブルグハルトがこの聖堂をして「世界で最も素晴らしく色彩豊かな建造物」と表現したもの尤もである。
残念ながら、ファザードは修復中で美しい金のモザイク部分は覆われているが、浮き彫り彫刻は見ることができる。(9月中旬現在)ドゥオモの堂内には問題なく入ることができます。(写真は昨年のもの)
側面は写真では見えないが、内部の半円の礼拝堂が突出して波状の線を描き白黒のストライプとの相乗効果で、とても優雅だ。
木製の天井に白黒を基調にした堂内は、かつては全体が見事なフレスコ画で装飾されていたのだろうが、今もなお見事に残っているのは主祭壇に描かれた聖母マリア様の物語のフレスコ画のみである。
身廊の柱の脇にバロック彫刻が並べられていたが、「14世紀15世紀の宗教画にもどろう」という19世紀に起きた芸術運動の趣向に合わぬと撤去され、現在は聖アゴスティーノ教会博物館に収納されている。写真から想像するに、白黒ストライプとバロック様式のドラマチックな彫刻の組み合わせなんて、素敵かも?!見てみたかった!う~ん、しかし全体的に見るとフレスコ画の比較的シンプルな堂内には不釣合いったのかもしれない・・・。
聖アゴスティーノ教会博物館は少し中心地から離れるが、バロック彫刻の先駆者フランチェスコ・モーキによる「受胎告知」の迫力ある作品が印象深い。
ドゥオモで見逃せないのが、聖ブリツィオ礼拝堂である。一面に描かれたフレスコ画は、天井の一部が1447年にフラ・アンジェリコによって、そして残りは1499年から1502年にかけてルカ・シニョレッリが手がけた。
フラ・アンジェリコによる柔らかい画風の審判のキリストが窓から差す光に輝き、ドラマチックである。なんという自然の舞台装置!
優しさが溢れるフラ・アンジェリコの聖人図とは異なり、ルカ・シニョレッリの力強い裸体のオンパレードには圧倒される。ミケランジェロが影響を受けたのも頷ける。今では神の存在、ましてや天国地獄なんて全く信じない人が多いが、漫画も映画もない時代の信心深い人々にとっては、ものすごく衝撃的な図柄であったことだろう。今見てもすごいのだから・・・。
聖ブリッツォ礼拝堂と対をなす、コルポラーレ礼拝堂。ボルセナ湖のほとりの教会で儀式の最中聖杯のぶどう酒がキリストの血となった奇跡を「ボルセナの奇跡」と言うが、奇跡の場面を描いたフレスコ画が今も鮮やかに私達に語りかける。もともとあった教会の上にさらに立派な現在のドゥオモを建設するきっかけとなったのは、「ボルセナの奇跡」の際、聖杯から滴るキリストの血を受け止めた布を奉るためである。単なる布、されど奇跡を受け止めた布である。中世において、聖遺物の力は恐ろしく強大だったのである。
町が最も隆盛を極めた時代に造られたドゥオモは競い合うようにどこの町のものも外観・内観ともに素晴らしいが、オルヴィエートも負けてはおらぬ。
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