フレスコ画の町パドヴァ

1月パドヴァとフェッラーラへ。

パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれたジョットによるフレスコ画は、その観察眼の鋭さと豊かな表現力で、ミケランジェロやラファエッロほか多くの芸術家に影響を与えた。

1月某日、ジョットの偉大なるフレスコ画を観るためにパドヴァへと足を運んだ。

サンアントニオ聖堂

せっかく訪れるのだからと観光情報を調べると、パドヴァはフレスコ画の町という。加えて、他の見所も多い。それならば時間が許す限りで色々と見てみようと、まずはパドヴァの聖アントニオ聖堂へ。パドヴァの聖アントニオとは、フランチェスコ宗派を示す茶色い僧衣に3つの結び目の腰紐の身なりで、子供を抱くまたはパンを持つ若者の姿で表される聖人である。

サンタントニオ聖堂2

彼の姿はフランチェスコ宗派の教会ならばよく目にすることから、とても愛されているのがわかる。それを反映するかのように、彼の名を冠する教会は非常に立派である。外観は北イタリアらしい煉瓦造りで、ヴェネチアのサン・マルコ聖堂のクーポラを彷彿とさせる美しい建築物だ。

パドヴァの聖アントニオ

リスボンで生まれた聖アントニオは1231年にパドヴァ近郊で逝去し、ここに眠る。聖堂内のきらびやかな装飾が目を楽しませてくれる。ジョットに影響を受けたドナテッロの力強い作品が聖堂主祭壇にあるのだが、近くで見れず落胆した。ちなみに、パドヴァ後のドナテッロの作品は「ユディトとホロフェルネス」、「マグダラのマリア」「サンロレンツォ教会の説教台」といずれも強烈な表情が印象的である。

ガッタメラータ

聖堂前の聖人広場にあるドナテッロ作の「ガッタメラータの騎馬像」。これは、古代ローマ以後、初めての騎馬像となる。

パラッツォデッララジオーネ

パラッツォ・デッラ・ラジオーネは「理性の宮殿」と呼ばれる旧裁判所(兼市庁舎)の建物である。野菜広場と果物広場に挟まれ、建物の4隅にある階段は「鉄の階段、ワインの階段、鳥の階段、布の階段」と周辺に立った露店から名付けられている。ここは政治と商業の中心地であった。

パドヴァ観光

中に入ると、まずは建築物の大きさに驚く。柱のない空間として世界で最も大きい広間だそうだ。占星術と正義にちなんだ絵が四方の壁面にぎっしりと描かれた様は見事である。

パラッツォロッジァ

南北に設えられたロッジアの天井も素敵である。

落書き

パドヴァの街角の恋人たち。

洗礼堂

ドゥオモ付属洗礼堂も面白い。クーポラ内部には、全能の神キリストを中心に使徒、預言者と37人のパドヴァ出身の聖人が並ぶ。

怪獣

旧約・新約聖書の物語、そして、黙示録。7つの頭を持つ獣??こういうフレスコ画って、見てて楽しーい!

カフェペドロッキ

ここはパドヴァの名物カフェ「ペドロッキ」。18世紀から欧州で起こった珈琲ブームに乗り、19世紀に開業。ネオ・クラシック様式の店構えが当時を彷彿とさせる、歴史的文学カフェだ。スタンダールにジョルジュ・サンド、ガブリエル・ダヌンツォなどが訪れた。

ミントカフェ

看板メニューのミントクリーム入りエスプレッソを文士気分で頂く。もうちょっと熱くてもよかったな。でも、ミントと珈琲はいい組合せで気に入った。

オヴェターニ礼拝堂

一息入れた後は、エレミターニ教会を見学。お目当てのアンドレア・マンテーニャによるオヴェターニ礼拝堂は第二次世界大戦で戦火の被害に合いほとんどが破壊された。なんとか修復を試みるもままならず、非常に残念であるとともに、戦争の無意味さに怒りを感じる。

スクロヴェーニ礼拝堂

そして、待望のスクロヴェーニ礼拝堂へ。エレミターニ教会横にある教会付属美術館から入る。スクロヴェーニ礼拝堂は事前予約が必須。当日券はないのでご注意を。見学所要時間は30分。前半15分はビデオ鑑賞するのだが、その間に礼拝堂内の空気調節をするのだそうだ。後半15分で礼拝堂内を見学。

ジオット

1枚の絵が想像以上に大きく、時を感じさせない色鮮やかなフレスコ画は言葉にできないほどに美しい。受胎告知に捧げられた礼拝堂なので(ゆえに、3月25日の訪問は避けるべし)、主祭壇に受胎告知、上段にマリアの両親とマリアの物語、中段、下段にキリストの物語、受胎告知の対面には最後の審判が、生き生きとした細やかな描写で語られている。そして、天上の青が印象的だ。各場面に見所があり、物語が横に進むだけでなく縦にも繋がりを持ち複雑な構成となっている。

チマブエは絵画界で王座を占めたと思っていたが、
今ではジョットが名声を獲た。
ために前者の影は薄れてしまった。

と、ダンテが神曲で謳っているのがヒドイ言い方やと思っていたけども、今ではホンマやと頷ける衝撃的なフレスコ画なのである。

キス

今日はヴァレンタインの日なので、スクロヴェーニ礼拝堂で最も熱い1枚を。マリアの両親ヨアキムとアンナのキスシーン。キリスト教芸術史上、最初のキス。2人の光輪がハート型に見えちゃうのは、偶然か?はたまたジョット先生の粋な演出か?喜びの再会のはずが、暗色の衣を纏う沈んだ表情の女性が背後に迫る。2人の運命や、いかに?!

1場面というのに非常に能弁で、ジョットの革新的な技巧を思うとあまりのことに息苦しささえ感じるのである。

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