トスカーナの秘境の村ピティリアーノへ。
トスカーナ州の南の端、ウンブリア州とラッツィオ州の境には、凝灰岩の上に聳え立つ町がいくつか存在する。有名なのはオルヴィエートだが、南トスカーナの凝灰岩の町も独特の魅力を放つ。まだまだ知名度は低いが、それでもそれなりに観光客が訪れる町といえば、ピティリアーノとソラーノだろう。いずれの町も山の間からその姿が現れると「アッ!」と感嘆の声を上げずにはいられない。
(写真は、ソラーノの町。)
そして町の中へ入ると感じるのは、何ともいえない懐かしさ。なんだろう・・・。いわゆるイタリアの小さな田舎町なのだが、トスカーナの田舎町とは違うこの感じは?
そう、なんともいえない昭和チックな匂いがするのだ。凝灰岩を利用して作られた家の壁は灰色で、それほど手入れがされているとは思えぬ様子が寂寥の感をぬぐえない。しかしこの灰色の石材の連なる家々が、素材もスタイルも全く違うのに昭和の長屋のようで、妙に下町情緒が溢れている。
家の前には所々、椅子が置かれている。名前が書かれた椅子も見かけた。一日が長い夏には、涼しくなると老人たちが家の外に出てきては各々の椅子に座りおしゃべりを楽しむのであろう。
頭上で洗濯物がはためく通りをあちこち散策し、深い皺の刻まれたおじいちゃんに挨拶をする。
フィレンツェのような観光都市では感じることのない、ここで生まれて育ってきた人々の飾り気のない素朴な生活空間を垣間見ることができる町。
もう廃家じゃないの?と思える扉も、この店、今も営業してるの?と疑うような古びた店構えも、まだまだ現役だ。中世の趣きを感じる町というのは、中世と現代という2つの別々の遠く離れた空間が存在しており、ほほぅ、中世はこんな感じだったのかと想像を掻き立てる。
今もまだ現役の古さを感じる凝灰岩の町々には、生きている人間のぬくもりが感じられる。
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