トスカーナの小さな村ラディコンドリ。
シエナから車で西へ1時間ほど行くと、丘の上に建つ村ラディコンドリが見えてくる。低い日差しがさす冬の午後、サンガルガーノ修道院ツアーの一環で訪れた小さな村は、寒さで通りを歩く人はほとんどおらずクリスマスの名残りが寂しく風に揺れていた。
ここに何があるのですか?と問われると、何もありませんよ。静かな村落です。としか答えようのない村なのだが、何故、私がこの村をツアーに組み入れたのか?
それは、一枚の絵葉書から。
観光地で、トスカーナの風景、広場、村を美しく切り取った絵葉書は数多く売られているが、その中で目を引いたのがこの写真であった。手にとった絵葉書の場所はどこだろう?と疑問に思い、葉書を裏返すと「Radicondoli」という名前を見つけた。
シエナ県の1000人たらずの小さな村。世界から忘れ去られたような村、連なる屋根の煉瓦色にトスカーナ産の砂岩でできた外壁のサフラン色を纏った姿は、私が今まで見知った場所とは別世界のようだ。テラスに立つと、ちょうど夕暮れ時。煙突から上がる煙がまるでこの村の時を刻んでいるかのようにゆっくりと流れ、帰宅を急ぐ小鳥たちのさえずりだけが聞こえてくる。
テラスから街を見下ろすと、絵葉書で見た風景が現れた。ようやく出会えた興奮と懐かしさにも似た気持ちが入り交じりる中、憧れの風景を写真に納めた。
門の外には、トスカーナの田園風景が広がる。シエナ県というのは、村も景色も誰に見せるわけでもないどんな田舎でも非常に美しい自然体で、それが本当に様になる。
影のせいか波打つような通りが美しい。夕映えのオレンジ色に染まった通りには、怖いぐらいに誰もいない。もしかしたら時空のズレに落ちてしまい、とある物語の中に入ったのかと錯覚に陥りそうだ。これが物語だとしたら、どうだろう?おばあさんが若い少女に戻る思い出話とか?不思議な探し物をしている少年を助ける話とか?二足歩行するダンディーな猫の事件簿とか?
洗濯物のような本来ならば生活臭がするものまでが、絵になるイタリアの不思議。この村ではむしろ生活を感じることで安心するぐらいだ。いつまでも見飽きない風景。
サボテンの色が濃いなと近づくと、石にサボテン模様を描いたオブジェだった。これ、いいアイデア!
心に温かい思い出をしまってラディコンドリを去る。また来るね。
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