ラヴェンナのモザイクを観て。
初夏を思わせる日に、ラヴェンナを訪れた。世界で一番美しい初期キリスト教時代のモザイクを見るために。1996年に世界遺産に登録された8つの建物の中、ラヴェンナツアーではモザイクで飾られた教会施設7つを見学する。これでラヴェンナの世界遺産のモザイクをすべて見ることになる。
天を覆う煌めく青の世界に吸い込まれる。「最も高貴たるお方」という称号を持つ西ローマ帝国の皇妃ガッラ・プラチディアの廟堂。「最も高貴たるお方」という言葉に相応しい輝きは、多くの芸術家にインスピレーションを与えた。
サンヴィターレ聖堂は、レンガ造りの集中式8角形の聖堂である。
質素なレンガの外観からは想像できないほど、豪奢な堂内。東ローマ帝国のビザンチン様式を色濃く受けた、輝く金色が眩しい。
サンヴィターレ聖堂の床のモザイク。鳩だろうか、片足をあげた生き生きとした模写が素晴らしい。
西ローマ時代の洗礼堂。ヨルダン川に半身を浸したキリストの、水の透明感が良い。天井のモザイクは首が痛くなってしまうが、痛さも構わずにずっと見上げ続けていたいほどラヴェンナのモザイクは魅力的なのだ。
こちらは、東ゴート王国の時代の洗礼堂。西ローマ帝国が476年に崩壊した後、ラヴェンナを支配した王国である。西ローマ時代の洗礼堂の方が動きがあって素晴らしいが、私はこの洗礼中のシーンが可愛くて大好き。
聖アポリナーレ・ヌォーヴォ教会は、東ゴート王国、そしてその後にラヴェンナを支配した東ローマ帝国時代に建築された。時は500年頃。堂内にはキリストの奇跡と受難の名場面が描かれた26枚のモザイクがある。写真は「最後の晩餐」。原始的ではあるが、ちゃんと表情があり面白い。
歴史の中で「最後の晩餐」を描いた絵のうち、最も有名でかつ代表的なのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品であろう。
モザイクの「最後の晩餐」から、約千年後の作品である。
聖アポリナーレ・ヌォーヴォ教会のキリスト名場面シリーズの1枚で、「最後の審判」。
世界で最も有名な「最後の審判」といえば、システィーナ礼拝堂のミケランジェロのフレスコ画。
新アポリナーレ・ヌォーヴォ教会のものから、これまた約千年後の作品である。
2大巨匠の絵を思い出しながら、ラヴェンナのモザイクに千年という想像できないほど長い月日を思う。
インベーダーまでモザイクになるラヴェンナの町。
最後に、新アポリナーレ・イン・クラッセ聖堂へ。キリスト教美術に苦しみの末の救済がやってくるのは、この時代から500年は先のこと。ラヴェンナのモザイクはすべて幸福に満ち溢れている。その中でこの教会のモザイクは最も牧歌的で平和的ではなかろうか。
この部分は「キリスト変容」である。
ラファエッロの「キリスト変容」。約千年という時間差はあれど、いずれも幸福な気持ちにさせる「キリスト変容」である。
幸福な気持ちになって、フィレンツェへの帰途に着く。
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